「待て!」
「ッ!・・・フラン」
悪役いるところにヒーローのあり
フランは裏口から堂々と出てきた。
その声にサーカス団員が一斉にセシルを見る。
「魔界に住むセシルだ!」
「なんでここに」
「また悪さしに来たのか!」
口々に自分の思ったことを口にする。
だが、セシルはそんないつも言われる悪口は耳に届かずフランを見つめている。
この瞬間がセシルは嫌いだった。
さっきまで笑顔で話していたフランが今は殺気をむき出しにして剣をセシルに向けている。
「どうしてこんなことするんだッ!」
どうして?
それはお前が一番分かってるのだろ?
「ハハハ、楽しいからに決まっているのだ。」
お決まりの言葉に用意されたの言葉で返す。
「セシル・・・どうあっても分かってくれそうにないんだね。」
「ハッ!元々私とお前では平行線。交わることはいなのだよ。」
フランに向かって走る。
刃を脳天直下で振り落とす。
フランは素早く剣でガードして力でセシルを吹き飛ばす。
クルリと一回転して体勢を立て直す。
くるくると刃を自在に回し真っ正面から攻撃を仕掛ける。
フランは十分に引き付けてから一瞬で避け、セシルの右足目掛けて剣を降り下ろす。
「つッ!」
見事セシルの右足に剣が刺さり、足元がぐらついた。
だが、これはフランの優しさだった。
急所を避け足を狙いセシルが逃げる口実を作るためのものだった。
しかしセシルにそんな考えは伝わらない。
「きょ、今日はここまでにしといてやるのだ!」
ありきたりの負け惜しみを言って痛む足を庇うようにしながらサーカスの裏口から逃げる。