「ばぁちゃんなぁ…………お父さんのこと何ひとつ、覚えてないんよ……」
私は思わず息を呑んだ。
きゅーっと胸が締めつけられて、泣きたい衝動に襲われた。
だって……
あれだけ毎日元気で、ずっとにこにこと笑顔を絶やさないおばぁちゃんが……
どこか遠くを見つめて、つらそうな顔でゆっくりと微笑んでいたから。
メガネ越しに見えたおばぁちゃんの瞳はキレイに澄んでいて、とてもとても優しくて。
なのに、寂しそうに見えた。
私は、一生忘れないだろう。
あの横顔を。
どこか寂しそうに哀しそうに、ふっと微笑むおばぁちゃんの横顔を。
私は、一生忘れない。
そして私はその時、全てを悟ったんだ。
おばぁちゃんが…………戦時中に生まれ、
お父さんを亡くした悲しみと戦いながら懸命に生きてきた、一人の女性だということを。



