「あの男の人なぁ、あんたらぁのお父さんになるけんな」
ある寒い冬の日、突然お母さんに言われたこの一言。
結構重要なことなのに、お母さんは何事もないように、サラッと言ってのけた。
もちろん私と弟たちは、お母さんの言っている意味が全く分からない。
弟が小声で聞いてくる。
「なぁなぁ姉ちゃん、あの人、俺らぁのパパになるん?」
「はるにも分からん…。なるんじゃろーか……」
私たち3人はこの日、どうしようもない不安を抱えたまま眠りについた。
それから少しして、その男の人は本当に私たちのお父さんになった。
今思えば……この日から、私たちの運命が崩れ始めたのかもしれない。



