そう。
 
 ホントはわかっていたんだ。 

 ソレは、間違えた正義だったんだ。



 イジメに加わらない――


 ソレは、ただ、

 見て見ぬ振りをして、ソレから逃げていただけだったんだ。


 わかってたけど、

 わかってたけど、ソレは誰かの役目で、つうより、そんなことどうでもよくて、関わらなきゃ、気分よくいられると思って。


 だって、

 そんな正義ぶれば、自分がヤラレルから。

 本当の正義なんて、本当に強い誰かが持てばいいことだから。

 僕らの……、そう、こんなちっぽけな僕らの正義なんて、所詮それぐらいのもんで。




 わかってたけど、

 わかってたけど、それを認めたら、もっと苦しいから。

 その苦しみをわかち合うだけの強さが自分にはないから。


 だから見て見ぬ振りだったんだ。

 ソレが、僕らの精一杯の正義だったんだ。



 それでも春は、悲しい色ばかりで。

 それなのに春は、ちっとも暖かくなくて。
 


 僕らには、限界だった。

 苦しくて、苦しくて、春が苦しくて。



 だって、みんなわかってたんだ。




 僕らは、誰も責めることはできないってことを。