アパート「寿荘」

太一は普段人から賞賛されるということは殆どゼロに等しいため顔を真っ赤にし、俯いた。

こういう時にはどんな顔をすればいいのか分からなかった。

「だから一つお願いがあるの。」

真由子は手を顔の前で合わせてお願いのポーズをとった。


「私をミュージシャン宮川太一のファン一号にしてよ!!絶対に東京に歌聞きに行くから。それまで夢を諦めないでよ。」


そう言うと真由子は笑って肩をぽんと軽く叩いて笑った。


「ああ、最前列で聞かせてやるよ。約束だ!!」


太一は小指を出して真由子に指きりを求めた。

真由子もその指示を理解した様子で指を絡めてきた。