大塚さんは俺が乗るまで、乗らずに待っていて、俺が座ると同時にドアをくぐった。
「乗り心地、普通車よりは良くないですけど、一日お付き合いください。」
スポーツ使用のシートは、硬くて深い。
長い時間乗っていると、俺でも腰が痛くなる事がある。
「カッコイイです。あ、そうだ。良かったらどうぞ。」
大塚さんは俺に缶コーヒーを差しだす。

あ、これ。

俺が時々売店で買ってるやつだ。
「ありがとうございます!俺、これ好きなんですよ。」
覚えていてくれたんだと思うと、その心遣いが嬉しかった。
「当たった!これだったかなーって、少し心配だったんです。」
安心したように笑う大塚さんを見ると、なんだか自然に俺も笑顔になれる。

緊張もするけど、こういうの・・・なんか、いいな。

「めちゃ嬉しいですよ!」
素直な気持ちを返して、クラッチを踏んでギアを1速に入れる。
「じゃあ、出発しますね。」
「はい!」
弾む声に背中を押されて、俺は車を走らせた。