いや。
深く考えてはいけない。

目の前の瑞希はそうされて、本当に悔しかったんだろう。
彼女の手の中にあるアルミ缶は、ベッコベコだ。
あの細い手の何処に、そんな力があったのか。

「準備して、玄関に向かってた時です・・・。いつもみたく、弟は私の外出先をしつこく聞いてきました。」

お母さんか!
しかもいつもって・・・瑞希、荷物持ってたし、それだけで彼なら気付きそうだ。

「私はちょっと照れくさくて。泊まりに行くとしか言えなくて。でも、それだけで弟には分かってしまったみたいで。」

なんとなく想像がついてしまう。
たった一日、それもほんの数十分も言葉を交わしていないのに。
それぐらい和希君のインパクトは強い。


「伊東さんの所に泊まりに行くのかって。ひ、卑猥な言葉もたくさん言われて。」


卑猥・・・。

そこで顔を真っ赤にされると、余計何言われたか気になる!!

が、
なんとか突っ込みたい気持ちを抑え、次の言葉を待つ。
気を逸らそうと、手に持ったままだったビールを飲みながら。