::::::冷泉家:::::



・・・俺は今、たぶん沈んでいる。
転校生のあの子のせいで。

「大翔君」

そう呼ばれて、
ああ、覚えてもらってたんだ・・・

嬉しかった。

でも、彼女は何も覚えてなかった・・・。

いいんだ。昔からなんの関わりあいも、
なかったんだ。


「親父の部下の娘」


それは、事実だ。
親父の部下の娘だから興味があった
・・・っていうのも、嘘じゃない。

でも、もう1つの理由は、
もっと深いところにある。

「いい加減、思い出せよ・・・」

つい、独り言をいってしまった。

「何悩んどんの?」
「桃也っ!?」

・・・なんでコイツが
俺の部屋にいるんだよ・・・

「お前なあ、大親友様が優しく
 聞いてあげとんやぞ?
 素直に頼りなさい・・・とかな(笑)」

お前だから、相談したくないんだよっ!!
言いふらされて終わりだろ?!お前の場合

「どうしたん、大翔?変な顔してんでお前」

・・・ここは、話題をそらそう。

「俺のことよりさ、お前。
 菜々とどうなってんの?今」
「?」

し~ん・・・
おい、桃也・・・なんか言えよ。

「桃也・・・?」

「なんで菜々が出てくんの?」
「え・・・?」

コイツ、菜々が好きじゃなかったっけ・・・


「俺は今、白百合さんのことしか
 頭にないから」 


俺は何も言えなかった。