しかし、 「……ちっ」 ドアノブを捻ると、かけたはずの鍵が開いていた。 こういう時は、どういう事になるのか、よく分かっている。 「何の用だ」 ドアを開けながら、健太は冷たく言った。 中で、悠々と煙草を吸って自分を待っていたのは、組織の人間だった。 男は『河合』……と名乗りはしたが、 どうせそれは本名ではないのだろうと、すぐに分かった。 彼は、名前を捨てた人間だ。 そういう、においがした。