ただ、河合が急にげらげらと笑いだした事は、 おぼろげながらに理解できた。 そしてそのまま、河合はどこかへ行ってしまった。 一人残された剣太は、膨大な渦に飲まれた。 博士、懐かしい街の風景、勉強部屋、数式、ランプの光、 渡された地図、一人の旅、出会った人々。 ……そこで記憶は途切れ、次に始まる記憶の一番最初にいたのは……。 ――巨大なガラスケースに入った、『何か』。 そしてその次に浮かんだ少女の顔は、 出会った時の穏やかな笑顔で。