「佳主馬、上手だね!」

 梨桜がはしゃいだ声を上げる。

 梨桜があんなに楽しそうにしているのは、久しぶりに見たような気がする。

「…」

 俺は俯いた。

「梨桜、俺、ジュース買ってくる。何がいい?」

 佳主馬が財布を取り出しながら言った。

「カルピスお願い!」

 梨桜が笑顔で。梨桜の笑顔を見ていると、もやもやした感情が膨れ上がって行った。

「わかった。すぐ戻るから」

 二人は、海水浴に来たカップルみたいにその場に溶け込んでいる。

 そのことで腹を立てる自分が情けなくて、ちっぽけに思えた。