「アイツにいるわけねぇだろ。つか、いたとしても俺には関係ねぇしな」

「残念だったわねぇー。千花ちゃんを他の男の子に取られちゃうなんて」

 …人の話聞けや。

 俺はムッとして、部屋の出口に向かった。ドアノブに手をかけたところで、

「いいの?このままで」

 母さんの言葉が聞こえた。

「…アイツは俺のこと、これっぽっちも覚えちゃいなかった」

 あんなに仲良かったのに。

 あんなに互いを慕っていたのに。

 たった十年間。されど十年間。

 十年間の隙間って、こんなにもでかいものなのか。