ちゃんと、梨桜を捕まえておくべきだった。

 隣に置いておくべきだったんだ。

 なのに、俺は梨桜を自分から遠ざけた。

 だから、佳主馬が梨桜とキスしていたんだ。

 俺が、梨桜だけをいつも見ていたら――。

「姫、愛してる」

 後ろで、佳主馬が囁くのが聞こえた。

「佳主馬くん…私、頑張るから。龍太のこと、頑張って忘れるから」

「…俺は姫にツラい思いをさせない。泣かせない。浮気なんかして、君を離したりなんかしない」

 その言葉が、俺に向けていた言葉のように聞こえて。

 俺は、逃げるように校舎へ戻った。