「……」

 梨桜は、俺を見上げたまま、何も言わない。

「…梨桜?」

 俺の言葉に、梨桜が小さく声を漏らした。

「誰と…電話してたのっ?」

 …!

 まさか。

 俺は、声を無くした。

 梨桜は、駅にいたのか…?

「私、知ってるんだよ。龍太が、女の子と電話してたの」

 梨桜が言う。

 梨桜は駅に来なかったんじゃない。俺に声をかけれなかっただけなんだ。

「待て、梨桜。それは――「言い訳なんか、聞きたくない!」

 梨桜が、金切り声を上げた。

 窓が開いてるし、たぶん外に響いたんだろうな…って、そんなことはどうだっていい。

「少しくらい、聞――「龍太にとって、私ってなんだったの?」