私が言うと、

「なんで龍太がそう言ったか、知ってるか」

 幸也が携帯をしまいながら。

 幸也は、廊下で龍太を説得してたんだ。

「知ってるわけないでしょ。私が知ってたら、おかしいじゃない。梨桜はそれを知らなくて落ち込んでるし、龍太とは話してないし!!」

 私が言うと、幸也は苦笑を浮かべ、

「そうだよな」

 と言った。

「でも、なんで龍太は梨桜にあんなこと言ったの?」

「傷つけたくないんだってさ。龍太曰く、『俺は梨桜のことが好きだ。だけど、梨桜は蓮の女だ。だから俺は手を引くしかない。梨桜に嫌われれば、俺も諦めが付く』だってさ」

「…自分勝手ね。相手の気持ちも知らずに」

「けどさ、龍太も必死だったんじゃないか。梨桜もことが好きで、でも諦めなくちゃいけないから」