「とにかく、席座ろう。な?」
龍太に言われて、私は二組の席まで急いだ。
そういえば、入学式って親と一緒に出るんだっけ…。私のお母さんは、お父さんがいない分、朝は五時半から、夜は十一時まで働いている。バイトを掛け持ちしてたりもして、大変なんだって。
だから、定休日とかは朝から晩まで寝倒して、入学式にも来ない。
小学生の入学式にはいたけど、卒業式にも、中学の入学式、卒業式にもいなかった。今日の入学式にも来ていない。皆の隣にはお母さんかお父さんがいるのに、私の隣には誰もいない。一人だけ、浮いている気がして、嫌だった。
お父さんがいればなぁ。
私は泣きそうになって、俯いた。
空席の隣にいた男の子が声をかけてきた。
「君も一人?」
も、ってことは、この子もなのかな?
「俺、相澤蓮」
相澤蓮(アイザワ レン)くんかぁ。
「俺も一人なんだ」



