僕のとなりは君のために

ナイフを当てられた首がチクっとした。

痛みがどんどんと鋭くなっているのがわかる。

もう、俺はここで死ぬのか・・・・・・

まぁ、大好きな場所で死ぬのも悪くない。

それに、君は無事だし。

「待って!」

僕があきらめかけたとき、君の声が届いた。

君はリポーターの女性を手で退かし、僕たちの前にきた。

相変わらず鋭い眼光をしているが、いつものように殺気めいた威圧感が、君から消えている。

「なんだおまえ! また人質になりたいのか!?」

小父さんが君に向かって喚いた。

「彼を放して! 私が人質になるわ」

君は小父さんに負けないくらい、大きな声を出した。

一瞬眩暈がして、僕は思わず自分の顔を手で覆った。

君は何を言ってるんだ・・・・・・

「私が人質になるわ」

君の声がもう一度聞こえたので、僕は

「何を言ってるんだ! 早く帰れ!」

と強い口調を我慢できなかった。

君の頑固さを僕はよく知っている。

ちょっとやそっとのことでは、君は自分の決意を変えない。

それが君のよきところであり、逆に僕の一番心配するところでもあった。

案の定というべきか、君は僕の訴えを無視し、しっかりと小父さんを見据えた。

「彼に死なれては困るわ。だから人質は私がなる」

「馬鹿かっ! これじゃなんのために僕が人質になったんだ」

頭に血が昇った。

一週間前と同じ寂しい光景が、目の前で走馬灯のように回る。

「またケンカしたいんですか・・・・・・」



僕は無言で君を見つめる。

君もまた何も言わず、僕を見つめた。