僕のとなりは君のために

第二戦は君の圧勝で収まり、僕は颯爽と君の手を引いて、その場をあとにした。

これ以上その場にいたら、僕らはある種の動物虐待で警察に通報されてしまう。

ガラスの自動扉が開き、君に文句の一つでも言おうと思った矢先のことだった。

突然、胸に衝撃が走った。

吹っ飛ばされて、痛んだ尻を押さえながら、また君の逆鱗に触れてしまったのかと考えた。

しかし、僕は決定的な間違いに気づく。

君は僕の右手にいるのに対し、僕は真正面から攻撃を受けてしまっている。

つまり僕を殴ったのは、君ではないことになる。

頭を上げると、そこには見知らぬ小父さんが僕を睨み、見下ろしている。

どうして彼は僕を殴ったのだろう。

サラリーマンの小父さんは、ネクタイを握り締め、なんだかとても怖い顔をしていた。

僕と彼は初対面のはずだ。

立ち上がろうとしたとき、右から人影が動いた。

「ちょっとあんた! 人にぶつかっといて謝りもしないの!?」

君は両手を腰に当て、怒った。

「うるせぇ・・・・・・」

小父さんは低い声で唸り、歯茎をむき出しにする。

なんだかヤバイ。

直感がそう警報を鳴らす。

僕は臆病のせいで、普段からそういう直感は結構な的中率で当たる。

そして今日の悪い予感も、見事に当たったのだった。

小父さんは手にしている光るモノを取り出すと、君の胸倉を掴んだ。



「動くな! 動いたらこの女を挿すぞ!」