僕のとなりは君のために

祈りが通じたのだろうか、二回目の挑戦で熊のぬいぐるみはいとも簡単に頭の向きを変え、落下口に突進した。

よし! 落ちた。

熊を取り出し、君の手に渡す。

「やった!」

君はあまりの嬉しさに踊りだし、両腕で熊を抱きしめていた。

「ねぇねぇ、この熊、なんだか岳志に似てない?」

君は熊を僕の肩に乗せ、見比べる。

「似てねぇよ」

僕は少しむっとした言い方で君に言い放った。

こんな畜生に似てたまるか。

そんな僕を君は知ってか知らずか、熊の鼻を指で突っつき、

「今日からお前の名前は、たけぴだ」

と独り言を言う。

たけぴ? やめてくれ。

「ねぇ、ほかに名前はないのか」

僕は極めて冷静な口調で君に言った。

「この熊にはプーさんというキャラクター名がついてるんだ。だからたけぴと呼ぶな」

あれこれ言ってる間に、ゲームセンターを一周した。

君は難しそうな顔をして、UFOキャッチャー以外のゲーム機を決して触ろうとしなかった。

確かに大型アーケードゲームやテレビゲームは、初心者の君にとって手の出しにくいものだろう。

なら、これはどうだ!

僕が指差したのは、一際古い台だった。

「なにこれ?」

「モグラ叩きさ」

「モグラ叩き?」