僕のとなりは君のために

高校から通っていたゲームセンターの自動ドアをくぐると、さっそく明るい音楽が流れてきた。

天井の七色の装飾灯がホールを鮮やかに照らし、いっそう楽しい気分をさせてくれた。

「うわ! ここがゲームセンターか」

君は門をくぐると、足早とゲーム機に駆け寄った。

「来たかったっていうのは、ここ?」

僕は聞いた。

「うん。これどうやるの?」

まるで初めてオモチャを与えられた赤ちゃんのように、君はUFOキャッチャーの中に展覧された景品に目を輝かせた。

「ゲームセンターは初めてかい?」

「うん・・・・・・」

恥ずかしそうに、君はうなずいた。

少し驚いたけど、僕は根気よくUFOキャッチャーの遊び方を説明した。

「これはね、レバーとボタンを使って中の景品を取るんだ」

「もらえるの?」

「取れればね」

「やった! わたし、あの熊ほしいな」

君はガラス越しに、ディズニーのキャラに指差した。

どうやらお金さえ入れれば賞品はもらえると勘違いしたらしい。

「やってみる?」

僕はコインをいれ、君にキャッチャーの操作の仕方を教える。

君の初挑戦が始まった。

君は指の骨を鳴らし、一歩踏み出した。

明らかに緊張した面持ちをしていて、なんだかこっちまで震えてきた。

その姿は、まるで大事な試合の前に控える格闘選手みたいだった。

赤コーナーより、天野選手の登場でーす! といった感じで。

君はレバーに軽く触れると、“ウィーン”という機械音と共にキャッチャーのアームが動き出した。

「すごい! 動いてる!」

「そうだね。すごいね」

機械が動くよりも、このハイテクな時代にこれしきのことに感動する君に、僕は感動を覚えた。

それと同時に、初めてリングに上がる格闘家の覚束ないステップでも見てるような不安感もあった。