僕のとなりは君のために

「なんで泣いてるの?」

君は僕の顔を覗きこみ、苦笑いを見せた。

「だって、君までもが僕を見放したと思ったから・・・・・・」

僕は叱られた子供のようにうつむき、ぽそりと言った。

「バカね。そんなわけないでしょう」

君はポケットからハンカチを取り出し、そっと僕の顔についている涙を拭いた。

「ごめんね・・・・・・」

君は小声で申し訳なさそうにそういうと、いったん僕の顔から目をそらしたが、やがてなんの迷いもなく再び僕を見つめた。

「ごめんね。あなたの気持ちにも考えずに」

「ごめん。こちらこそ」

僕は笑った。

半分ほっとした笑みで、半分照れ隠しだった。

君はわかってくれてたんだ。

「抱きしめてもいい?」

君はそう言った。

「うん」

ちょうど僕も同じ事を考えていたので驚いた。

君に先に言われたのがなんだか少し悔しかった。

そして、悔しさのはるか数倍も嬉しかったのだ。