僕のとなりは君のために

歯医者の帰りに、君は駅のベンチに溜まっている不良高校生たちに手を出したね。

煙草をくわえ、四六時中に獲物を探すように上目遣いをしている彼らは、この世でもっとも僕と無縁で、関わりたくない人種のひとつだった。

それを君が勢いよく彼らを注意したとき、僕血が引いていくのを感じ、後頭部が金属バットに殴られたような衝撃すら覚えた。

僕は君の性格をよく把握しているつもりだ。

君は自分の理に反する者には容赦しない。だからといって、彼らに君の言葉が届くとは思えない。

強気な双方。

どっちも折れることはない。

衝突は早々目に見えている。

だから僕は君の前に立ち、精一杯のユウキを出して、君を守るつもりでいた。


しかし案の定というべきか、君はグループの一人と口論になり、そのまま乱闘にまで発展した。

何人かは君になぎ倒されたが、一斉に六人に囲まれた時はさすがにまずいと思った。

正直に言おう。

そのときの僕は怖かったんだ。

自分が傷つけられるより、君が心配だった。

頭が真っ白になった彼らはなにをするかはわからない。

だから君を守るために、僕は君を連れて逃げ出すしかなかった。それしか思いつかなかった。

それは、君を守るためであり、自分を守るためでもあったんだ。


公園に逃げ込み、僕が君の安否を確認してると、君の手のひらがなんの躊躇いもなく僕の顔に命中したね。