僕のとなりは君のために

(2)

音子。


いろいろあったね。

君と一緒にいると、僕は退屈を感じたことがなかった。

もちろんいい意味であって、悪い意味でもある。

君が騒ぎを起こし、僕はいつもその道連れだった。


覚えているのかい? 僕と君の挿話はそれだけでは終わらないよ。


そう。例えばある日曜日の朝。

のんびり寝ている僕の元に、君が一本の電話をよこしてくれた。

歯医者に行きたいので、つきあってほしい、と。

僕はすぐにOKした。

というのも、そのときの僕はすでに君といることになんの疑問を持たなくなっていた。

君と一緒にいると安らぎすら感じるようになっていた。

もちろん、僕は君に殴られて快感を感じるような変態ではない。

ただ、君は絶えずいろんな話題をふってくれて、常に行動力のない僕を引っ張ってくれていたことが何よりもありがたかった。

日溜りの午後に、教室の中でボケっとしてると、もし明日に世界が滅亡するとしても、僕はきっと亀のようにいつも通りにノロノロと一ヶ所に留まるのだろう。

そのぐらい、僕は行動力のない人間だ。

だからかもしれない。

とろとろと前へ進まない僕。

なんでも好奇旺盛の君。

君にあって、僕にないもの。

僕たちの性格はパズルのように、ぴったりと一つに嵌ったのだ。



それゆえ、僕は君のおかげで、災難が五月雨のように降り注いでくれた。