背を向け、僕は自分の不覚さを呪った。もし僕が君を見とれてることがバレたら、僕は一生君にからかわれるハメになる。

幸い君は大量の酒を飲み干し、意識が朦朧としているので、大丈夫だった。

酒を抱え、君の元へ戻ると、君はなにやら隅っこで小さくなっていた。身体を三つに折り曲げ、膝を抱きしめるように座り込んでいた。

「どうした? 気分悪い?」

君の隣りにしゃがみ、背中を擦った。

「うぅ・・・・・・気持ち悪い・・・・・・」

君の口から悲鳴にならない悲鳴がこぼれる。顔を自分の胸に埋め、本当に気持ち悪そうにうな垂れていた。

アルコールというのはそういうものだ。酒の中に含まれる陽気な成分が人の気持ちをいっとき高ぶらせ、限りなく天国まで登らせてくれる。

だけど、陽気な天使が過ぎ去ったあとに待っている気持ち悪さは、地獄に近い。

少し溜息をつき、「水を持ってくるよ」と君に告げ立った。歩き出そうとしたが、ジーンズが何かに引っかかった。

君の手が僕のジーンズの裾を掴んでいる。

「どうした? ほかに何かほしいのか?」

「い・・・かない・・・・・・で」

裾を握る君の小さな手がぎゅっと力が入った。

ドキっ

心臓が大きく音を発てて、鳴った。

「大丈夫か?」

試すように、君に話しかける。心臓が口から飛び出しそうだ。

君は返事を、しない。

寝ちゃった?

揺すってみた。

次の瞬間、君は膨らんだ口を押さえた。

まさか!

君と初めて会った日のことが走馬灯のように、目の前で回った。



もう、勘弁してくれ・・・・・・