君は僕と同じ大学で、一つ上のフランス学科に在籍していることを、君が恋人宣言したあとに聞かされた。

最初はものすごく驚いたけど、よく考えてみればそんなに不思議な事でもない。

僕たち最初に出会ったのは駅の中だ。つまり君は僕と同じ電車乗って、同じ大学に通っている可能性は極めて大きいというわけだ。

「なんでこの打ち上げにいるんだよ?」

「研究会に友達がいるから」

あっさりと君は言い返すと、またバケツをぐるぐると回し始めた。

「では、皆さん! そろそろ乾杯といきましょうか!」

部長が合図を送る。みんなのバケツに一斉にビールが注がれた。

「すごい! これを飲むの?」

君はバケツの中身を見つめながら、口元を不気味なほど吊り上げた。

「では! 乾杯!」

みんなが一斉に飲み始める。

僕は飲むふりをして、バケツを口に傾けた。黄色の苦い液体が唇に触れ、ひんやりとした冷たさを残した。

急いで息を止めると、液体が頬を伝って地面へ流れ落ちる。

ダイナミックに飲んだふりをして、実は一滴も飲んでいないのだ。ほとんどのビールはこうして流した。酒に申し訳ないと思いながら、これもここで生きていくための悪知恵だと自分を慰めるほかない。

酒を流し酔ったふりをして、あと寝るだけ。立っていられない素振りをみせ、地面へ座り込んだ。

立っていると、死ぬまで飲まされるのがこの部の恐ろしさだ。

よく見ると、この場にいるほぼ半分の人間がそうしてる。みんな、そうやって賢くなっていくのだ。

立っている人間といえば、初めて参加する面子ばかり。

「おう!」

背後から君の声が聞こえてきた。


――まずい! 


振り向くと、すでに君は酒を飲み干したバケツを高々と掲げている。

君の頬がさっきとは明らかに色が違っていた。