これは、たった一人の女性のために書かれた私信のようなもの。

ある意味この作品は読む人間を選ぶのかもしれない。このようなものを公開してなんの意味があるんだろう。

疑問を抱きながらも、それでも一人でも多くの人に僕の声を聞いてほしくて、記憶の断片を少しずつ書いていくことにした。


これは、僕と音子(ねこ)の物語である。


音子。

君は覚えているのかい、僕たちの最初の出会い。
もう、君は覚えていないだろう。仮に覚えているとしても、きっと記憶がひどくあやふやになっていて、断片でしか思い出せないと思う。

あれは、僕にとって人生最高の出会いだったのかもしれない。あるいは、最低の出会いだったのかもしれない。

君は泥酔状態で、僕も生きることにひどく疲れを感じていた状態のときだった。

あのときの僕は失恋していた。この物語を語る上で、僕のこういった背景をまず説明しなければならない。だから、少しだけ我慢して聞いてくれるかい。