「谷森さんっぽい理由」
「え、それってどういう意味!?」
「褒め言葉やん」
どの辺が褒めているのだろう。
「まぁ、暗くならんうちに帰った方が良いよ。
福岡は治安良くないらしいけん」
「そうなん? 初めて聞いた」
「色々ワーストの県で危ないらしいけん気を付けりぃ」
最後にそう言ってにっこり笑ってから、颯人は教室を出て行った。
そんなふうに笑われたら、もっと好きになってしまうやん。
叶うはずもない恋なのに、もしかしたら、なんて淡い期待を抱いて、あたしはいつまで想い続けるんだろう。
始まりは高校1年生の春だった。
それは、まだ桜の花がちらほら残っていた頃。