美月はリュウを探すのに懸命に走った。笑みが零れた。美月が走ると猛烈に草が靡き、他に目もくれないほどリュウの方向に向かった。
そして突然、美月は止まった。思わず口を手で押さえた。顔を強ばてた。言葉など出なかった。その場に立ち往生したままだった。
愁は遅れ、ゆっくりと歩き進んだ。美月の背中が見えた。少し息切れしていたが、美月に話しながら近づいていった。「結構歩いたね。さっき、リュウを見た場所から結構あるよ。本当。ふー、良かったよ、リュウがいて……」美月は動かなかった。愁の言葉を聞いているのかわからないほどに止まっていた。「みつき?」愁は美月の名を呼び、美月を見ながら横に出た。だが、美月は一点を見つめ、愁に気づく様子もなかった。愁はそんな美月を不審に思い、美月の足元を見ると赤く染まった草が、先の方まで続いていた。愁はその染まった草を目で追った。
その先を見ると愁は硬直した。目を見開き、美月の足元から赤く染まった草は徐々に広がり、木にも染みつき、さらに追うと、体中の皮が剥がされ、血だるまの死体があった。「リュウ……」愁が言うと、咄嗟に美月は驚きの顔で愁を見た。愁に震えが起こった。息が詰まり、言葉など出なかった。その死体に近づき「リュウ……リュウ……」ただその名を呼ぶのに精一杯だった。「誰がこんな事を……誰がこんな事を……誰が……」愁は血だるまのリュウの死体を抱きかかえた。顔を頬摺り、そのまま抱き抱えて立ち上がり、美月に近づいた。美月はまだ動かないでいた。「美月……行こう……」愁の一声だった。美月は体が硬直したまま、愁に従って歩き出した。二人は山道を何も話さずに歩いた。もう日は沈みかけ、二人は影となり、愁はリュウを抱いてそそくさと歩き、美月は愁の後を継いで山を下っていった。
悲しみが耐えなかった。その夜、愁はリュウの小屋の横に穴を掘り、リュウを埋めた。穴の周りに恵子と愁と美月は囲み、祈った。
「何でこんな事になったのかしら……」
恵子は悲しみで、目に涙をためて言った。
「リュウは僕の友達だったんだ。いつも一緒だったんだ。僕はリュウに何でも話せた」
「誰がこんな事を?この村の人じゃないわ。リュウは山で迷って殺されたのよ」
恵子が言った。それを聞き、愁は冷静に答えた。
そして突然、美月は止まった。思わず口を手で押さえた。顔を強ばてた。言葉など出なかった。その場に立ち往生したままだった。
愁は遅れ、ゆっくりと歩き進んだ。美月の背中が見えた。少し息切れしていたが、美月に話しながら近づいていった。「結構歩いたね。さっき、リュウを見た場所から結構あるよ。本当。ふー、良かったよ、リュウがいて……」美月は動かなかった。愁の言葉を聞いているのかわからないほどに止まっていた。「みつき?」愁は美月の名を呼び、美月を見ながら横に出た。だが、美月は一点を見つめ、愁に気づく様子もなかった。愁はそんな美月を不審に思い、美月の足元を見ると赤く染まった草が、先の方まで続いていた。愁はその染まった草を目で追った。
その先を見ると愁は硬直した。目を見開き、美月の足元から赤く染まった草は徐々に広がり、木にも染みつき、さらに追うと、体中の皮が剥がされ、血だるまの死体があった。「リュウ……」愁が言うと、咄嗟に美月は驚きの顔で愁を見た。愁に震えが起こった。息が詰まり、言葉など出なかった。その死体に近づき「リュウ……リュウ……」ただその名を呼ぶのに精一杯だった。「誰がこんな事を……誰がこんな事を……誰が……」愁は血だるまのリュウの死体を抱きかかえた。顔を頬摺り、そのまま抱き抱えて立ち上がり、美月に近づいた。美月はまだ動かないでいた。「美月……行こう……」愁の一声だった。美月は体が硬直したまま、愁に従って歩き出した。二人は山道を何も話さずに歩いた。もう日は沈みかけ、二人は影となり、愁はリュウを抱いてそそくさと歩き、美月は愁の後を継いで山を下っていった。
悲しみが耐えなかった。その夜、愁はリュウの小屋の横に穴を掘り、リュウを埋めた。穴の周りに恵子と愁と美月は囲み、祈った。
「何でこんな事になったのかしら……」
恵子は悲しみで、目に涙をためて言った。
「リュウは僕の友達だったんだ。いつも一緒だったんだ。僕はリュウに何でも話せた」
「誰がこんな事を?この村の人じゃないわ。リュウは山で迷って殺されたのよ」
恵子が言った。それを聞き、愁は冷静に答えた。
