二度目の恋

「妖精だ……」
「妖精?」
 美月は愁の足元を見た。
「ホントだ、妖精」
 美月は思わず微笑んだ。
「ここにいるんだ……リュウ」
「えっ?」
 美月は愁を見た。
「ここにいるんだ……リュウ、ここにいるよ!」
 愁は叫び、喜び立ち上がって、辺りを見渡した。だが、霧が濃くて遠くまで見渡せなかった。
「何かいる!」
 そう言葉を放ったのは美月だった。
「えっ?」
 愁は美月の言った方向を見た。
「黒い影……今、霧の向こうで黒い影が動いたの!」
「何処!何処!何処!」
 愁は興奮して辺りを見渡した。
「今、今動いた動いた!リュウ、リュウよ!」
 美月も興奮して立ち上がった。
「リュウだ。美月、リュウだ!」
 愁はとても興奮していた。
「愁、行こう!」
 美月の言葉で二人は手を繋いで走った。<リュウがいる!>霧が二人の前を激しく流れていた。二人はとにかく無我夢中で走った。何処まで行けばいいかわからなかったが、黒い影が見えたところまで延々に走り続けた。湖は何キロも続いた。二人はとにかく走り続けたが、全然辿り着かない。愁は立ち止まった。美月は愁が突然立ち止まったので、引っ張られるように止まった。
「シュウ?」
 美月が聞いた。
「やめよ。全然辿り着かないよ」
「もうすぐよ」
「もうすぐ?いつになったらもうすぐなの」
 美月は黙り込んだ。
「もう、疲れたよ」
 愁はその場にへばりこんだ。
「シュウ……」