二度目の恋

二人は希望を持った。笑みが零れ、手を繋いで湖の入り口まで走った。二人で枝に結んである赤いリボンを確認した。そして草むらに入っていった。道程が長く感じた。いくつもの草を掻き分けて、リュウを探しながら二人は湖に向かった。
 そして、最後の草を掻き分けると、湖が現れた。その周りには霧がなだらかに流れ、視界もはっきりと定まらない。「リュウ!」愁は叫んだ。湖の、この空間に木霊した。「リュウ!」美月も叫んだ。だが木霊しただけだった。「リュウ、いないのかなぁ」愁は不安に言った。「もっともっと、湖の周り、探して見よ!」美月は愁を宥めながら言った。
 二人は歩いた。この大きい湖の周りを。霧が邪魔して遠くまで見渡せず、目を真ん丸くしてリュウを探した。「リュウ、リュウ」段々不安は募り、愁の叫ぶ声も小さくなっていった。「リュウ!」それでも美月は諦めず、リュウの名を叫び続けた。「美月、諦めよ」愁は諦め、その場にしゃがんだ。「何で?きっと何処かにいるよ」美月は諦めていなかった。愁のためにもっとこの山や湖の隅から隅まで、一緒に探したかったのだ。だが愁はしゃがんだまま動きはしなかった。
「やっぱり怒ってるんだよ」
「そんなこと無いよ」
 美月も愁の隣に座り言った。
「ううん、僕のこと怒ってんだ。前もあったの。リュウがいなくなったこと。パパと僕がもの凄く喧嘩したの。リュウの事だったんだけど……僕が、リュウの散歩をもの凄く嫌がって、そのことでパパが怒っちゃったんだ。その喧嘩をリュウ、聞いてたんだ。次の日小屋にいなかったの。リュウの事は嫌いじゃないよ。だって友達だもん。ずっと、友達だもん」
 愁はとても悲しい顔をした。もう、リュウに会えないのかと思った。美月はそんな愁の姿を見て慰める言葉を考えていた。だけどどんな言葉を言っても慰めにはならないことは、美月にもよくわかっていた。
「そのとき、リュウは何処にいたの?」
 美月は聞いた。
「森の隅で寂しそうに歩いてた」
「でも愁は悪くないよ。偶然よ。今回もそう、偶然よ」
「でも、何処にもいない。こんなに探したのに」
「まだ探してないとこ、いっぱいあるじゃない」
「どこ?」
「この湖だって、まだ探し切れてないんだよ」
 その時、愁に近づいてきた影がある。<妖精?>一人の妖精が、愁の目の前で止まり見上げた。