二度目の恋

「えっ?だっておかしいじゃない。こんな大雨に、人に『どこ行ってた?』と問われたら」
 女は吹き出し、笑いながら言った。
「どこ行ってた?」
 直也が言った。
「熊に餌やってたの。小熊よ、こ・ぐ・ま。野生の小熊。迷子の小熊ちゃん」
 また女は吹き出して笑った。
「動物は大切にしないとな」
 直也は笑いながら言った。
「そうよ、動物のお陰で私達は生きているの」
 女は言うと、直也の体に張り付いたシャツをはだき、胸元を見せた。
「この胸に生えるセクシーな毛がいかすわ。あなたも野生の動物よ」
 女は直也の胸元を何度も摩りキスをした。
 直也は女を抱き、キスをした。舌を絡ませ、情熱的に激しく止むことはなかった。そのまま直也は体を重ねながら床に落ちていった。
「濡れた体がまた、激しく興奮するぜ」
 直也は女のシャツを脱がすと、女の濡れた胸が飛び出した。直也は胸に顔をつけ、舌で体中なめ回し、その舌をまた絡めて激しく唇を重ねてキスをした。美月は驚きのあまり声が出そうになった。それを遮(さえぎ)るように母親が美月の口に手を当てた。二人は静かに寄り添って、その様が過ぎ去るのを脅えながら待った。
「おと……」
 女が言った。
「音?」
「音がした」
「ああ、俺の女房とガキだ。何処かにいんだろ」
 美月は震えが止まらなかった。母親も同じだった。体中震えが止まらず物に振動を与えた。その震える手で母親は、美月の震えを止めようと体をさすっていた。
「何処かで聞いてるのかしら、私たちのセックス」
 女が言った。
「ああ、何処かで聞いてるさ。きっと、震えながら感じている」
 直也は微かに微笑んだ。
「興奮するわ。それがまた感じるの」
 女は、うっすらと笑った。美月はその女を陰から見た。不気味に笑う女の顔が美月の心から離れなくなった。女の顔と叫びが美月の中で木霊した。その女がかおりと重なり合ったんだ。かおりは美月の頬にキスするとまた直也の元へ戻った。美月は微動だに、動きはしなかった。目を開いたまま、瞬きをしないまま、その場にしゃがみこんだ。「じゃあ、二階へ上がりましょ」かおりが直也に言うと二人は腕を組み、かおりは小さく美月に手を振って二階に上がった。