「親のことだよ。俺等は子だ。たけちゃん、カード配って」
 竹中は裏向き一枚づつカードを配った。そして二枚目をガン太の前に置いた。クラブの十だ。愁の前にも二枚目を置いた。ダイヤのジャックだった。そして竹中は自分のもとにもカードを裏向きに置いた。
「さあ、カードが配られた。ここからが大切だ。チップを出すんだ。愁は一枚か?二枚か?」
 愁はためらった。
「ハハハ、これは練習だよ。チップは取らないよ」
 愁は安心してチップを一枚出した。
「一枚か。じゃあ俺は二枚出す」
 ガン太がチップを二枚出した。
「さあここからが大勝負だ。裏のカードをそっと覗くんだ」
 愁はカードを覗き、ガン太も自分のカードを覗いた。
「カードの合計は?二一にならなければまたディーラーにカードを貰えばいい。さあ、いくつだ」
 ガン太は自分のカードを睨み、笑っていた。ガン太は余裕だった。ガン太のカードはハートのジュウとクラブのジュウだった。合計は二十だ。ディーラーからカードをもう一枚請求する必要もなかった。勝ち誇った顔をした。たとえ練習だとしても、相手が子供だとしても負ける訳にはいかなかった。それがガン太のプライドだ。
「愁、二枚のカードを足してみろ。それが二十一の数字に近ければそのままでいい。程遠ければもう一枚ディーラーにカードを貰え。ただ、数字が二十一より大きくなったときそれはドボン、ゲームは終了だ。愁はカードを請求するか?」
 愁は首を横に振った。
「ほう、請求しない。数字は大きいか?」
 愁は首をまた横に振った。
「これ、何?」
 愁はいい、カードを表向きにテーブルに置いた。
「ブラックジャックだ」
 竹中が言った。愁のカードはダイヤのジャックとスペードのエースだった。
「負けた……」
 ガン太が泣き叫んだ。カードを投げ放ち、悔し紛れに竹中に聞いた。
「タケちゃんは?」
 ガン太が言った。
「だめだめ、クラブの七とスペードのキングで十七だ」
 ガン太はそれぞれ出したチップをかき集めて愁の前に置いた