「あ、ごめん。今持ってくるよ」
 唯はタオルを取りにいった。
「な~にが、『あ、ごめん』だ。彼奴は昔からそうなんだ。肝心な時に役に立たない。役立たずだ。いや、肝心なときじゃない。僕が困ってるときはいつもそうなんだ。僕に限ってそうなんだ。……待てよ。僕だけってゆうことは、計算か?」
 芳井はブツクサと独り言を言いながら、手に持っていた布巾で顔を拭いていた。
「愁、ちょっと窓を開けてくれないか」
 竹中が言い、愁は席を立って窓を開けた。外は雨がもの凄い降っている。
「すげ~」
 ガン太は外の雨を見て言った。唯がタオルを持って、戻ってきた。
「はい、ヨッシータオル」
「おう!唯、ちょっとシャワー浴びるわ」
 芳井はタオルで頭を拭いながら、シャワー室へ向かった。愁はまだ外を眺めていた。
「愁、いつまでそんなとこにいるんだ。早くこっち来て、ゲームに参加しろ」
 竹中は言った。
「だって分からないんだもん」
「ブラックジャックだ」
 ガン太が言った。
「それは分かってるよ。ゲーム知らないよ。ブラックジャック知らないもん」
「分かった、教えてやるよ。こっち来い!」
 手招きしながら、ガン太は言った。愁はガン太の隣りに、寄り添って座った。
「いいか、ブラックジャックは、ゲームの中でも一番簡単なゲームだ。数字を二十一に近づければいい」
「二十一?」
「ああ、そうだ。まずたけちゃんを、ディーラーだとしよう」
「ディーラーって、何?」
 愁が聞いた。