ガン太が暫く自転車を進めたところで、突然叫び呼び止めた。
「ガンちゃん、ちょっと待って!」
ガン太は足を地につけて自転車を止め、振り向いた。すると愁が走り近付いてきた。
「何だ?」
「僕もやる!郵便配達!僕も手伝わせてください」
「どうした?」
「ママを助けたい。ママを少しでも楽にしたいんだ」
ガン太は少し考え、愁に言った。
「分かった。乗れ」
愁は後ろにあった手紙の入った鞄を抱えてそこに乗り、ガン太は自転車を漕ぎ始めた。曲がった自転車のタイヤが妙な音で唸り、ガタゴトガタゴト揺られながら二人は進んでいった。
二人の乗った自転車は止まった。愁が見ると、目の前に家があった。ガン太の家だ。「上がれ」ガン太が言うと、愁は自転車を降り、玄関の扉を開けて中に入っていった。
愁はガン太の家に、久しぶりに来た。ガン太は愁を寝室へ案内し、愁は寝室に入った。その部屋には、洋服タンス、小型テレビ、本なんか殆ど入っていない本棚。他に、今は押し入れに入っているが、二人分の布団が敷けるスペースがある畳の殺風景な部屋だ。愁はそのスペースに座った。愁はよく遊びに来ていたから、見慣れてはいた。ガン太が押し入れを開け、二段になっている押し入れの、下の段から段ボールを三箱取り出した。ガン太はその段ボールの一つを開けると、中から服を放り投げ始めた。一つ目を空け終わると二つ目を開け、二つ目も空け終わると、三つ目を開けた。その時には、辺り一面投げ出された服で、部屋は埋め尽くされていた。「あった!」ガン太が叫んだ。段ボールの中から、取りだした物。それは、小さな黒い服だった。「愁、この服ちょっと着て見ろ。俺が小学校の時、着ていた学生服だ」愁はその学生服に触れた。「おい!お~い静江」ガン太は少し威張り口調で呼ぶと、足音が聞こえ「何よ」古希(こき)静江(しずえ)が顔を出した。ガン太の妻だ。太ってはいないが、少し顔も腹もふっくらとしてきている。ちょっと食べると太る体質のようだ。
「ガンちゃん、ちょっと待って!」
ガン太は足を地につけて自転車を止め、振り向いた。すると愁が走り近付いてきた。
「何だ?」
「僕もやる!郵便配達!僕も手伝わせてください」
「どうした?」
「ママを助けたい。ママを少しでも楽にしたいんだ」
ガン太は少し考え、愁に言った。
「分かった。乗れ」
愁は後ろにあった手紙の入った鞄を抱えてそこに乗り、ガン太は自転車を漕ぎ始めた。曲がった自転車のタイヤが妙な音で唸り、ガタゴトガタゴト揺られながら二人は進んでいった。
二人の乗った自転車は止まった。愁が見ると、目の前に家があった。ガン太の家だ。「上がれ」ガン太が言うと、愁は自転車を降り、玄関の扉を開けて中に入っていった。
愁はガン太の家に、久しぶりに来た。ガン太は愁を寝室へ案内し、愁は寝室に入った。その部屋には、洋服タンス、小型テレビ、本なんか殆ど入っていない本棚。他に、今は押し入れに入っているが、二人分の布団が敷けるスペースがある畳の殺風景な部屋だ。愁はそのスペースに座った。愁はよく遊びに来ていたから、見慣れてはいた。ガン太が押し入れを開け、二段になっている押し入れの、下の段から段ボールを三箱取り出した。ガン太はその段ボールの一つを開けると、中から服を放り投げ始めた。一つ目を空け終わると二つ目を開け、二つ目も空け終わると、三つ目を開けた。その時には、辺り一面投げ出された服で、部屋は埋め尽くされていた。「あった!」ガン太が叫んだ。段ボールの中から、取りだした物。それは、小さな黒い服だった。「愁、この服ちょっと着て見ろ。俺が小学校の時、着ていた学生服だ」愁はその学生服に触れた。「おい!お~い静江」ガン太は少し威張り口調で呼ぶと、足音が聞こえ「何よ」古希(こき)静江(しずえ)が顔を出した。ガン太の妻だ。太ってはいないが、少し顔も腹もふっくらとしてきている。ちょっと食べると太る体質のようだ。
