二度目の恋

「ちょうどよかった。愁ちゃん、おいで。一つ席が空いてるんだ」芳井は手にカードを持って振り向き、笑顔で愁の顔を見て言った。愁はそのみんなのいつもと変わらない状況を見て、何も言わずに立ち竦んでいた。「何やってんだ。早く座れ」ガン太が言った。いつもと変わらない、みんなの表情に少しホッとして、笑顔が零れた。凄く安心して笑顔の中、目に涙を溜め、グッと堪えて辺りを見渡すと、タバコの煙が充満している。「あ~あ~あ~あ~、も~、こんなにタバコを吸って!」愁はそう言うと、歩き出して部屋の窓を開けた。「ほら、気持ちいい」外の空気にあたり、暫くジッとする。涙が零れて止まないのだ。悲しくて悲しくて思い留まらない気持ちだ。だが愁はそれをも我慢し、涙を両手で拭って振り向き、平然を装うように席についた。みんな愁の気持ちは分かっていた。愁の平然を装う行動も分かっていた。ガン太も芳井も竹中も暫くカードを睨みながら、沈黙は続いた。唯はその姿を見ながらも俯き、立っていた。「彼奴、いい奴だったよ」芳井は口開いた。その言葉も少し途切れ「その席、愁が座ってる席は、いつも亨が座っていた」愁は、思わず立とうとした。「座ってろよ!もう、お前しか座れないんだから」ガン太が言った。みんなカードを睨んで、愁と目を合わそうとはしなかった。愁は自分を落ち着かせ、カードを睨みつけているガン太、竹中、芳井を見た。「今日パパに会いに、来なかったね……」愁は言った。「バカ、亨はいつだって俺達と一緒なんだ。俺達がここにいれば、きっと亨もここに来るんだよ。わざわざ会いに行く必要はないんだ……」ガン太は言った。