「パパね、急に決まった仕事で、迎えの車が朝早く来たの。それに乗って出て行ったわ。……パパが、愁に宜しくって」恵子が言った。「宜しく?」愁が言うと「子供に宜しくって、変ね」恵子は少し寂しげに、笑って言った。「いつまで?」愁は続けて言った。「さぁいつまでかしら、分からないわ。何しろ朝早く慌てて出ていったから……」恵子も席につき、二人だけの食事となった。亨は村や町の開発事業団体に所属している。その仕事で、今朝家を出た。遠い場所、いつ帰るか分からない仕事は初めてだった。「ほら愁、早く食べて学校に行かないと、遅れるわよ」恵子は言った。「あ!もうこんな時間。行かなきゃ」愁は立ち上がり、ランドセルを取って玄関にかけていった。「忘れ物ないわね!」恵子は叫び、玄関に走った。「うん!」愁は返事を力強くし、玄関を飛び出して走っていった。
愁は亨の帰りを待ち続け、毎日同じ日が続いた。決まった時間に学校から帰り、決まった時間にリュウを散歩に連れていき、決まった時間に食事をする。そして決まった時間に寝た。
リュウと散歩の帰り、いつも薔薇畑で夕日を眺め、待ち続けた。それでも亨は帰って来ない。亨がいなくなってから一ヶ月が過ぎた。
愁はいつも亨の話をしている。朝、学校に行く前に話し、学校から帰っても話し、食事の時も、寝る前にも話した。その愁の話を、恵子はいつも静かに聞いていた。愁には黙っているが、恵子は不安だった。亨から、一度も電話がない。こんな事は初めてでとても不安だったが、愁を不安にさせたくなくて、いつも笑顔でいた。だが、愁は何も話さない恵子の姿に疑問を持ちながら、いつも不安でいた。
そして恵子はいつものように、夕食の準備をするために、台所に立った。そのとき電話は鳴った。
愁は亨の帰りを待ち続け、毎日同じ日が続いた。決まった時間に学校から帰り、決まった時間にリュウを散歩に連れていき、決まった時間に食事をする。そして決まった時間に寝た。
リュウと散歩の帰り、いつも薔薇畑で夕日を眺め、待ち続けた。それでも亨は帰って来ない。亨がいなくなってから一ヶ月が過ぎた。
愁はいつも亨の話をしている。朝、学校に行く前に話し、学校から帰っても話し、食事の時も、寝る前にも話した。その愁の話を、恵子はいつも静かに聞いていた。愁には黙っているが、恵子は不安だった。亨から、一度も電話がない。こんな事は初めてでとても不安だったが、愁を不安にさせたくなくて、いつも笑顔でいた。だが、愁は何も話さない恵子の姿に疑問を持ちながら、いつも不安でいた。
そして恵子はいつものように、夕食の準備をするために、台所に立った。そのとき電話は鳴った。
