「僕は、ヨッシーのがないって、言ったんです」
「ひいきだ」
「ダイエット!」
 そう言い捨てると、唯は台所へ行った。
「だから女に逃げられるんだよ」
 芳井は貞腐れながら呟いた。
「え!何?誰が?誰が女に逃げられたの?」
 ガン太が興味深くは言ってきた。
「唯だよ」
「あの一緒に住んでた子?」
「そう」
「あの可愛い子だ」
 亨が聞いた。
「そう」
 唯が台所から戻ってきた。
「はい、愁。いっぱい食べてね」
 大量のピラフが盛られた皿を、愁に渡した。
「お前、女に逃げられたのか」
 亨が聞くと、唯は直ぐさま芳井を睨みつけた。
「ヨッシー内緒にしてって言ったでしょ!」
 そっぽを向いていた。
「逃げられたんじゃないよ。ちゃんと、彼女とは繊細な心を持って、別れようって」
 亨に説明した。
「でもお前、同居してたろ。出ていったのはどっちだ?」
 亨はまた聞いた。
「彼女だけど……」
「逃げられたんじゃない」
 ガン太が言った。
「逃げられてないよ!」
「此奴ね、逃げられた理由、何だと思う?」
 芳井が言った。
「何?」
 ガン太が聞いた。
「女っぽいから」
 芳井が言った。
「どっちが?」
 亨は聞いた。
「此奴に決まってるでしょ!だって、炊事洗濯全てやるから彼女にね『こんなに忠実な人嫌だから別れましょ』って」
「楽でいいじゃない」
 ガン太は言った。
「でも仕事で疲れて帰って来て、玄関でエプロンぶら下げた此奴が『おかえり!』って待ってたら?」
「やだな」
「でしょ!」
「でもお前、何でそんなに詳しいんだ?」
 亨が言った。
「此奴から泣きの電話が来て、彼女からも来たんだよ」
「ヨッシーが紹介したんだもんね」
 ガン太が言った。亨がカードを引いた。そのカードを睨みつけ、微かに微笑んだ。そしてカードを捨て
「フルハウス!」
 叫び、みんなの会話が止まった。
「ハハハ、ごめんね。ガン太は?」
「スリーカード」
 ガン太はカードを見せた。
「芳井は?」
「ダメ!ワンペア」
 芳井はカードを投げ捨てた。亨はみんなのチップをかき集めた。