「うまそ~」
 芳井は言い、唯はそれぞれの席に置いた。
「今日、料理教室で習ったんだよ」
 唯は腰に手を置き、自信ありげに言った。
「うまい!唯、これうまいよ」
 亨は口いっぱいに、ピラフを詰めながら言った。
「よかった~作った甲斐があったよ。今はね、男も料理ぐらい出来なきゃダメなんだよね」
「はい、愁」
 愁にも渡した。
「おい!」
 声が聞こえた。
「愁は今伸び盛りだから、沢山食べてね」
 愁は頷いた。
「おい!」
 その声に振り向き
「な~に、ヨッシー」
 芳井に言った。
「僕のだけ、少ない……」
 膨れていた。
「そうだよ」
「そうだよって、何でだよ」
「だってダイエットしてるじゃない」
「してないよ」
「ダメ!お腹出てきてるでしょ。今何キロ?」
「九十三あるんだよ」
 愁が言った。
「ちょっと、シュウちゃん!」
 芳井は言い
「痩せればいい男なんだけどねぇ」
 唯は呟いた。
「煩いよ、お前は。おかわり!」
 芳井はピラフを平らげ、お皿を唯に突き出した。
「おかわりないよ」
 唯が言うと
「本当に?」
 芳井はショボンとして、お皿を引き下げた。
「おかわり!」
 愁が元気良く叫んだ。
「ちょっと待ってね。今持ってくるからね」
 唯は愁のお皿を引き取り、台所に行こうとした。
「おい!唯」
 芳井が冗談交じりの怒った口調で言った。
「な~に?」
 唯は立ち止まり、振り向いて芳井を見た。
「さっきおかわりないって、言ったじゃないか」
「はい、言いました」
「じゃあ、何で愁はあるんだよ」