階段を上る足があった。その足は二階の部屋に近づき、ドアノブを回してそっとドアを開け、その部屋にいる美月に近づいて後ろからなだらかに抱きしめた。美月は微動だにしなかった。その姿は敬生だ。敬生は静かに美月の体を離れて、開いている窓を閉め、また美月を優しく抱き、顔を頬摺り、胸を揉み、そして優しく口付けをした。それでも美月は微動だにしなかった。「俺は、教会が嫌いだ。あの歌を聴くと頭が痛くなる。奴らは不合理なことまで、合理的にしようとする」敬生は額と額を合わせて美月の目を見、またにこやかに笑って口付けをした。「今朝はごめんな。突然殴ったりして。男は女の前では格好良く見せたいんだ」敬生は優しい口調で言った。「ううん、私がいけないの。私がキチンと廊下を掃除しなかったから。私が夜、あなたの相手を出来ないから」美月はその言葉を放ったが、敬生の目を見ることはなかった。「そうか、美月は優しいんだな。自分で自分のことをよく理解している。俺はそこが好きだ。愛してるよ」そういうと、また静かに口付けをした。
暗い部屋。窓の外はすっかり明るくなっていたが、この部屋に光は入ってこなかった。橘愁と松永健太郎はそれぞれが抱き枕を抱え、部屋に散りばめられた洗濯物や雑誌の山に埋もれながら寝ていた。時計の針はもう十時を回っている。その時、橘愁の携帯から着信音、松永健太郎の携帯から着信メロディが同時に部屋に響き渡ったが、二人はそれに気づかないで幸せそうに寝ていた。
暗い部屋。窓の外はすっかり明るくなっていたが、この部屋に光は入ってこなかった。橘愁と松永健太郎はそれぞれが抱き枕を抱え、部屋に散りばめられた洗濯物や雑誌の山に埋もれながら寝ていた。時計の針はもう十時を回っている。その時、橘愁の携帯から着信音、松永健太郎の携帯から着信メロディが同時に部屋に響き渡ったが、二人はそれに気づかないで幸せそうに寝ていた。
