二度目の恋

大きな音と共に、美月は跳ね返るように床に転げ落ちた。その先に永瀬(ながせ)敬生(たかお)の姿と女、花崎(はなさき)志(し)帆(ほ)の姿があった。志帆はホッソリとした腕を敬生の腰に巻いて嘲笑いながら美月を見ていた。「女の子に暴力を振るったらいけないわ。顔は……女にとって命なの」志帆は敬生の顔を頬ずりながら言った。「埃(ほこり)があった。廊下をキチンと拭いてねぇんだ。俺は汚いのが嫌いだ」敬生は言うと、リビングを出ていった。その姿を志帆は見送り、また美月を見て近づいた。「男は酷いわ~すぐ女を殴る。……何であんたと結婚したのかしら」そう言うと志帆は美月の顎を持ち、力強く自分に近づけた。「あんた邪魔なのよ」そう言って、美月の顔が揺れるほど力強く顎を持ち、美月を睨み続けた。美月は抵抗も出来ず、ただ顔を振るわせながら瞳だけは泳がせて志帆を避けていた。


 辺りは暗かった。風は冷たく吹く。コオロギや鈴虫の鳴き声は引っ切り無しに聞こえた。静江とガン太は村役場から帰る途中だった。静江はガン太の肩を抱え、フラフラになりながら歩いていた。「ほら、あんたシッカリ歩きな!」静江は怒鳴り上げた。「ん?」ガン太はフラフラになり、自分が何処にいるかも分からないほど酔っている。「飲み過ぎなのよ、いったい今何時だと思ってるの。もう朝よ。もうじきこの辺も明るくなるわ」静江は呆れながら、ガン太を抱えて歩いている。二人がフラフラになりながら歩いていると、恵子の家が見えた。うっすらと明かりがついている。「あら、恵子ちゃんもう起きてるのかしら」静江が言うと、ガン太を引きずりながら恵子の家に近づいていった。