愁は抱き枕を抱え、健太郎の隣で肩を並べて寝ていた。すると、突然愁は起きあがった。
「眠れな~い」
 愁は斑と横で寝ている健太郎を見た。その瞬間、瞼と眉はピクッとした。その驚きは隠せない。
「こりゃ~起きてんのか寝てんのか、わかんねぇな~」
 健太郎は半分目を開けて寝ていた。愁は健太郎の体を揺すった。「健太郎……健太郎……」健太郎は起きなかった。愁はもっと強く体を揺すった。「健太郎……健太郎……」それでも起きなかった。愁は考えて、今度は顔を何度も叩いた。「おきろ~!!」すると健太郎は目を擦り、寝惚け眼に愁を見て言った。
「なに~」
「眠れない……」
 愁は笑顔で言った。
「眠れないって……」
「もうちょっと話につき合ってよ。何か興奮して眠れないんだ」
「興奮って、いい年して……」
「お前、彼女いる?」
 愁は健太郎に構わず話し出した。
「え?いるよ」
「そ~なんだ」
「ああ、でも別れようと思っている」
「なんで?」
「他に好きな子が出来た。この前、その子に会いに行ったんだ」
「……で?」
「告白した。もちろん彼女がいることは、言わなかったけど……彼女、言ったんだ。『まだ会って間もないから、もっといろんなこと知って、尊敬できるようになったら』って」
「じゃあ、まず彼女と別れることだ」
「分かってる」
 愁は健太郎を見て微笑んだ。
「お前は大丈夫だ」
「そうかなぁ」
「ああ、大丈夫だ」