二度目の恋

 一階の奥の部屋から明かりが零れている。そこは、村役場の中でも一番小さな部屋。六畳の部屋と小さな台所がある。唯がドアを開けた。すると三人が畳の上のテーブルにカードを揃え、座っていた。愁は見渡した。みんな亨と愁を見ていた。「亨、遅いよ」一番奥に座っていた古希(こき)ガン太が声をかけた。ガン太は大のギャンブル好きで、いつも一番乗りでこの役場に来ていた。今日も一番に来てみんなを待っていた。
「まあいいじゃないの。亨ちゃんも早く座って始めようよ。ねっ!愁ちゃん、こんばんは」
 芳井(よしい)秀夫(ひでお)が言った。
「こんばんは」
 愁が言った。
「愁ちゃん、おじさんの隣りに座るかい?」
 愁は頷いた。芳井秀夫がまたやさしい口調で言った。一番ドアに近い席に座っている。小太りで、眼鏡をかけている。いつも額には汗をため、ティッシュで拭き取っていた。そしてもう一人、ガン太と芳井の間に座っている男。竹中直紀だ。無口な男で、いつもタバコを吹かしていた。このメンバーで、いつも集まっていた。亨は芳井と竹中の間に、愁は芳井とガン太の間に、座布団を敷いて座った。
「さあ、始めましょうか」
 ガン太が気合いを入れて言った。
「よし!この前はガンちゃんにやられたから、今回はやり返さないとね」
 片手に一本タバコを取り出し、火を付けて口に銜えながら芳井が言った。
「さあ、ポーカーゲームの始まりだ!」
 ガン太の一声で、みんなカードを持ち、カードを睨みつけながらカードを引き、カードを捨ててゲームが開始した。
「唯、ビール」
 亨が言った。
「はい、分かりました。」
 唯が台所に向かった。それに従って愁も立ち上がり、台所に向かった。
「唯兄ちゃん。唯兄ちゃん」
「おう、愁か。何?」
 唯が冷蔵庫からビール三本出し、オレンジジュースも手にとって
「飲むか?」
 と、愁に差し出した。愁は頷いて、ジュースを手に取り
「ねぇ、唯兄ちゃんはやらないの?」
 聞いた。唯は冷蔵庫から、カットチーズを取り出してつまんだ。
「苦手なんだよね、賭け事は。それにポーカー知らないし」
「ふ~ん」
 頷き、愁はコップを四つ取った。