「俺はおまえが好きだ。美月ちゃんも愛していた。おまえ達のためなら、何をしてもいい。俺はいつかお前がここに戻り、美月ちゃんの残した物を手に取ることを願って、あの時のまま、ここを維持した」
高山さんの思いに胸を押さえつけられながら私は黙り、その放置している物を一つ一つ見ると、ある物のところで目が留まった。それは、土に半分埋まっていた。錆びきっていて、火に炙(あぶ)られて黒こげになっていた。あの、銀の、まあるい缶だった。私は近づき、その缶を手に取った。そして錆びきって開きずらくなった缶を、音を立てながら回して開けた。そして中身を見たが、その缶の中身はサラサラの土だった。私はその土を手にとって、地面に落とした。
「なんだ?土か」
高山さんが言った。
「妖精がいたんです」
「妖精?」
「ええ、でも土に帰ってしまいました」
あの時、確かに妖精を捕まえたんだ。湖で、美月にプレゼントした。美月は大事にその缶を持っていた。奴が、その缶を奪って捨てようとしたとき、美月は一生懸命逃げた。逃げて、逃げて、奴に見つからない床底に隠れたんだ。床底から見える奴の足は美月に迫り括(くく)った。どんな気持ちだったろうか。美月はその恐怖に脅えながら、小さい体を渦くめて、土を掘って缶を埋めた。見つからないように、大事に────大事に────
「橘行くぞ」
高山さんは声を張り上げた。辺りは暗くなり始めていた。廊下や、部屋も暗く、電気はは点いていなかった。私は私の家の洗面台にいた。鏡を見ると、白く凍った無精髭が汚(きたな)らしく生えていた。鏡の扉を開け、中から古くなったシェービングフォームを取り出した。まだ使えるだろうか。シェービングフォームを良く振り、吹き出し口のスイッチを押した。するとジュルジュルと白い水が出たが、更にスイッチを押し続けると微かに泡のような塊が吹き出た。その泡を掌にのせて、顔のほっぺや顎になだらかに塗った。また、鏡の扉を開け、洗面台にある引き出しを開けたが、剃刀はなかった。私は台所や居間にもいきそこらの引き出しを開けたが無かった。そして二階に足を運び、私の部屋に向かった。そして扉を開け、部屋に入った。
高山さんの思いに胸を押さえつけられながら私は黙り、その放置している物を一つ一つ見ると、ある物のところで目が留まった。それは、土に半分埋まっていた。錆びきっていて、火に炙(あぶ)られて黒こげになっていた。あの、銀の、まあるい缶だった。私は近づき、その缶を手に取った。そして錆びきって開きずらくなった缶を、音を立てながら回して開けた。そして中身を見たが、その缶の中身はサラサラの土だった。私はその土を手にとって、地面に落とした。
「なんだ?土か」
高山さんが言った。
「妖精がいたんです」
「妖精?」
「ええ、でも土に帰ってしまいました」
あの時、確かに妖精を捕まえたんだ。湖で、美月にプレゼントした。美月は大事にその缶を持っていた。奴が、その缶を奪って捨てようとしたとき、美月は一生懸命逃げた。逃げて、逃げて、奴に見つからない床底に隠れたんだ。床底から見える奴の足は美月に迫り括(くく)った。どんな気持ちだったろうか。美月はその恐怖に脅えながら、小さい体を渦くめて、土を掘って缶を埋めた。見つからないように、大事に────大事に────
「橘行くぞ」
高山さんは声を張り上げた。辺りは暗くなり始めていた。廊下や、部屋も暗く、電気はは点いていなかった。私は私の家の洗面台にいた。鏡を見ると、白く凍った無精髭が汚(きたな)らしく生えていた。鏡の扉を開け、中から古くなったシェービングフォームを取り出した。まだ使えるだろうか。シェービングフォームを良く振り、吹き出し口のスイッチを押した。するとジュルジュルと白い水が出たが、更にスイッチを押し続けると微かに泡のような塊が吹き出た。その泡を掌にのせて、顔のほっぺや顎になだらかに塗った。また、鏡の扉を開け、洗面台にある引き出しを開けたが、剃刀はなかった。私は台所や居間にもいきそこらの引き出しを開けたが無かった。そして二階に足を運び、私の部屋に向かった。そして扉を開け、部屋に入った。
