二度目の恋

 愁は自宅へ向かって歩いていた。だが美月が気になっていた。何度も振り返り、美月の家を眺めていた。愁には気になっていることが一つあった。それは美月が帰宅しても、家の明かりすらつかないことだ。愁は立ち止まり、美月の家をジッと眺めた。そして愁の中に一瞬の不安が過ぎり、後戻りして美月の家へ向かった。
 愁は駆けて美月の家に到達した。するとどこからか悲しい音色の鼻歌が聞こえてきた。<美月……>するとそれを追うように、激しくドアを叩く音と叫び声が聞こえてきた。「開けてくれ~美月。なあ、開けてくれよ」愁はその声に心臓を突き破るぐらいの衝撃が走った。<美月を助けなきゃ>すると辺りをキョロキョロし、家の端を辿っている雨(あま)樋(どい)にしがみついて二階へスルスルと上っていった。
 二階の屋根へ降り立った。そこから美月の部屋まで辿って目の前までつくと、愁は部屋の窓を開けた。
 美月は窓が開いた方向を見た。月明かりが邪魔して影となって見えたが、誰か分からなかった。そしてその人物が前屈みに動いたとき、初めて愁の姿だと分かった。「逃げよう!」
愁は窓から一歩足を踏み入れて、美月に手を差し伸べて言った。「僕と一緒に逃げよう!僕が守るから……」美月は愁の言葉を聞き入った。ドアを叩く音が大きくなった。「さあ、早く!」愁は力強く手を差し伸べて言った。部屋の外で直也は体当たり押して、ドアを開けようとしていた。美月は愁に手を差し伸べ、窓の外に出て、二人は雨樋を伝って下へ降りていった。まず愁が降り、そして愁は美月の体を支えて雨樋から美月を降ろした。二人は背の高いススキの生えわたった原っぱに向かって走った。
 思いっきり体当たりしてドアを開けようとした。そして直也は力を振り絞って思いっきり体当たりすると、勢いよくドアは開いた。直也は息を切らし、部屋を見渡すと美月の姿はなく、窓が開いてることに気づいた。窓に近づき外を見ると、原っぱのススキが揺れ動いている様が見え、直也はすぐさまその場を離れて玄関に向かった。