二度目の恋

「おまえ、彼奴とやったのか?あの男とやったのか?俺以外の奴とやったのか?」直也はウィスキーのボトルをテーブルから無造作に取り上げ、一気に飲み干す勢いで口に含ませたが突然笑いだし、含ませた物が口のまわりに垂れ落ちた。直也は笑い続けた。腹を抱え笑い、床に転げて笑った。その光景にシャリーも少し顔が綻(ほころ)びたが突然直也が立ち上がり、シャリーの顔に自分の顔を近づけるとひっぱたいた。「俺を見くびるな!」シャリーは硬直して身動きできなかった。直也はシャリーにキスをするとまた笑い出し、突き放した。シャリーは倒れ、壁に強く体が打ち付けられた。それを無理矢理胸ぐらを掴み、シャリーを起き立たせてまた殴りつけた。またシャリーは床に倒れ込み直也は胸ぐらを掴んで言った。「俺以外の奴と会うことは許せねぇ。俺は、嫉妬深いんだ」シャリーはもう気を失っていた。それをまた胸ぐら掴んで殴りつけていた。「ママ?パパ?」美月の声がした。階段を降り部屋へ顔を出した。直也は美月に気づかずにシャリーを殴りつけていた。その光景に美月はただ何をしているのか分からず呆然と立ち竦んだままだったが、咄嗟に体が動き「パパ、やめて!」叫びながら直也の体を止めにかかって、直也は殴るのを止めた。ただ、息を切らしていた。美月は気絶しているシャリーのもとに寄り添い抱き抱えて「ママ~」と叫び続けた。直也は壁に寄りかかり、片手に持っていたウィスキーのボトルを飲み干した。


 美月はその記憶の狭間にいる。
 「美月、美月?」愁は呼んだ。愁は森林の間をもうダッシュに自転車を漕いでいた。風は靡き、美月の髪は昔の記憶とともに靡いた。樹木の影が波打つように愁と美月に映し出された。森林の薄暗さが徐々に徐々に明るく、眩しさが襲ってきた。樹木がだんだんと少なくなり、道が開けていくとそこに波打つ丘の草原があった。愁は自転車を止めた。そこは小高い丘になっており、村全体を見渡せた。「ここが美天村?」愁が言った。「ここが、美天村。この丘をずっと下っていくと村の中心街に出るわ」美月は言った。「分かった」そう愁が言うと自転車を走らせた。