二度目の恋

愁は山を下った。薔薇畑を通り、愁の家を通り過ぎると黄色く染まった稲の輝いた道を通り過ぎる。前から竹中がやってきた。
「よ!愁。配達か。がんばれよ」
「うん」
 竹中はそう言うと歩き出そうとした。
「ちょっと待って!手紙、あるかも」
 愁は自転車から降り、前に括りつけてある鞄を探り始めた。
「え~と、え~と、あ、あったあった」
 愁は四通の手紙を取り出した。
「これ」
「おう!サンキュー」
 そう言うと竹中は歩いていった。愁も自転車に跨り芳井の家へ向かった。
 芳井の家に辿り着くと一通の手紙をポストに投函した。
「シュウ?」
 庭から芳井が麦わら帽子に鎌を持って現れた。
「どうしたの?」
 愁が聞いた。
「これ?この格好のことか」
 愁は頷いた。
「草を取っていたんだ。庭のな。たまには庭の手入れをしないとな」
「何か、楽しそ~」
「愁もやるか?」
「うん、やらない」
「なんだよいったい。相変わらず訳の分からない奴だな」
「だって大変そうなんだもん」
「で、手紙は何通来てるんだ?」
 芳井はポストをあけた。一通の手紙が入っていた。
「なんだ、一通だけか。なんか淋しいなぁ」
「じゃあ僕いくね」
「あ、ああ」
 芳井はその一通の手紙を眺めていた。そしてまた庭へ体を引っ込めた。
 今度はガン太の家だ。
「おばさ~ん」
 愁は叫んだ。
「なんだい!」
 静江が玄関から顔を出した。
「なんだ、愁ちゃんか」
「はい、手紙」
 愁は二通の手紙を渡した。
「ありがとう。ねえ愁ちゃん、今日美月ちゃんは?」
「美月とは最近会ってないの」
「そうかい。どのぐらい?」
「う~んとね、一週間ぐらい。リュウが亡くなってから」
「やっぱり……」
 静江は腕を組んで考え始めた。
「どうしたの?」