「ただいま!」
 玄関のドアが開かれた。
「パパ?」
「美月、ただいま」
 直也の姿だった。
「今日、帰らないんじゃないの?」
 飛び上がって直也に近づいた。
「ちょっと予定が変わってな」
「そうなんだ、ちょ、ちょっと待ってね。今食事の用意をするから」
 美月は台所に向かった。
「ママはどうしたんだ?」
 直也は聞いた。
「何かね、出かけるって」
 台所に行く足を止め、直也に答えた。直也は疑心の顔で玄関の方向を見たが、すぐ振り返り美月に笑顔を振りまいた。
「美月、食事はいいよ」
「何で?」
 美月は不思議に思って直也を見た。
「ほ~ら」
 直也は手に掲げていた箱を差し出した。
「お土産だ!」
 満面の笑みだ。
「何?お寿司?」
 直也の顔を見た。直也は眉を顰(ひそ)めかした。
「お寿司なのね!」
 直也はにこやかに頷いた。
「ワーイ、パパ大好き!」
 美月は思いっきり直也に抱きついた。