「なぁ龍、中城 優姫って知ってるか??」
俺、東条 龍斗は幼馴染みに問われて首を傾げた。
(聞いたことはある気がするが…)
「…知らない。」
「えー?有名だぞ結構。」
知ってるかと聞いたのに知らないと答えたら不満そうな顔をする。
彼の名前は篠村怜一。
生まれた時からの幼馴染みで高校生になった今も親友で、腐れ縁。
バッテリーを組んでいて、こいつがピッチャーで俺がキャッチャー。
「…なんで有名なんだ。」
俺は口下手だ。
だけどこいつが考えてることくらいわかる。
(なんか話したいことがあるんだろうな。)
「彼女のあだ名は【氷の歌姫】っていうんだ。」
「【氷の歌姫】??」
「うん。優姫の姫からきてるんだろうけどちゃんと意味があるんだ。」
そこでニヤリと笑う。
「彼女の歌声を聞くとそこにいる生き物は凍ってしまうらしい。」
「凍る?そんな訳…」
ないだろ、と言う前に遮られる。
「ま、凍るってのは噂にしても、歌声がすごいのは確からしいね。」
「ふぅん。」
「あ、あと彼女の表情も凍ったように動かないんだとさ。」
「へぇ。…ところで、怜。」
「んー??」
「なんでそれを俺に話すんだ?」
俺が聞くと、キョトンとした表情になる。
そして、笑う。
