神奈の計らいで、貧民街の奥へ進むルートを図示してもらった二人は、彼女の住む家より先を歩いていた。

何せこの地下世界、アルトですら全体の把握は未だにできていない。行った先が生死を分ける場所である確率も高く、此処で新しい道を行くのは其れなりの準備が必要だった。そして新しく道を知ったなら、また新たなルートで仮住まいに戻らなければならなかった。面倒臭くはあるが、そうしなければ、荊に己の息を潜める場所を知られてしまう。
しかも神奈はアルトよりもこの貧民街を良く知っている、きっと彼女の情報は当てになるだろう。






「アルトが探してるものって何?安楽街って本当にあるの?」

「(……俺何も聞かないでくれって言ったよな、確か)」

「何で追われてるの?荊が必死にアルトを見つけようとするのは、」

「(…うるさ)」

「わ、ちょ、なに、今足になんか!っアルト!ちょっと待ってってば!!」



「……もう少し静かに歩けないわけ」



心底煩わしそうに月に振り返ったアルトの機嫌はやや悪め。それもそうだろう、神奈から離れてから月はずっとこの調子で喋りっぱなしなのだから。

ちなみ月の足に触れたのは唯の鼠である。


「アンタいっつも騒がしいんだよ。始末屋じゃあるまいし……少しは落ち着いて動けないわけ?」

「あ、待って何かあるのね。……城の跡?」

「(聞いてねえのかよ!)」




目の前に広がるのは、荒れ果てた城跡だった。