神奈の家だと言う、アルトの家よりも古い木造の家に連れてこられた。

初めてきたのに馴染みやすい空間であるのは彼女の朗らかな性格のせいだろう。
来て数十分ほどであるはずなのに、月はもう居心地良く棚に置いてある写真などを眺めていた。

アルトは見回りをすると言って二人で消えた死体の話をした後出て行ってしまったため、神奈と二人きり。気まずさは全く感じられない。



「アルトって…ずっとああだったの?」

だからこんな事を言ったのも本当に意識せず、無意識の合間に出てしまった。
むしろアルトがいなかったからこそ聞けたのかもしれない。

(彼の、過去を)


月の言葉に神奈は淹れたお茶をテーブルに置いて、月のいる窓際まで移動した。窓から見えるのは森でもなく空でもなく、土と暗い天井だけ。


「…月ちゃん、アルトのこと」

「え……ち、違うよ」

「怪しいわね」

ニヤニヤ、という表現が似合う顔をして彼女は楽しそうだ。女子特有の所謂ガールズトークの領域に危うく入りかけた。今はそんな生ぬるい空気ではない。




「────なんか思ったより、踏み込んでるなあ、私」


神奈が話す前に、そう呟いたのは月だった。苦笑まぎれに呟いたのは、自分でも呆れるほどアルトを知りたがっているからだ。


「……無神経なのかも。アルトはいつも私に大切な事は言わない、それって信用されてないって分かってるんだけど、さ」



好きや会いしてるなどと言った恋情ではなく、私は彼の隣に並んで見たかった。

そうして初めて、この世界を知れることに繋がる気がした。